たぶん、私が10歳くらいだったと思う。
私の兄貴は当時高校生で、部活で吹奏楽をやっていました。
吹奏楽部は全国大会に出場するほど優秀で、
兄貴も全国大会へ出場した経験があります。
ある日、県大会だったのか定期演奏会だったのかは忘れましたが、
父ちゃんに連れられて神戸文化ホールに兄貴の演奏を見に行きました。
演奏が始まってしばらくはおとなしく聞いていたけれど、
知らない曲ばかりでだんだん退屈になってきました。
席でゴソゴソしたり居眠りを始めたり・・・。
そんな私を見て父ちゃんが、
「ロビーに出てご飯食べといで」と、
行き道に買ってったにぎり寿司の折りをくれました。
折りを持ってロビーへ出てみると、出演者の保護者や、
むさ苦しい高校生たちがいっぱい・・・。
小学生だった私は大勢の大人達に怖じ気づいてしまい、
すぐに会場の中に戻りました。
「どうしたんや」と父ちゃん。
「人がいっぱいおるから・・・。」すると父ちゃんは演奏の途中であるにも関わらず私を会場の外に連れ出し、
空いていた椅子に座って折りを広げました。
広げた折りの中の1列は、私が一番好きなネタのはまちのにぎり。
父ちゃんはハマチに箸を付けることなく、ただ二人して黙々とにぎりを食べていました。
そんな中、向こうに兄貴の姿が。
「お兄ちゃん!」って手を振ると、兄貴が気付いて私達に近づいてきました。
兄貴は私の膝の上に広げられた折りを見ると、
はまちのにぎりを一つ二つと口の中へ。
「ふああっ!!」と驚き、見上げると兄貴は背を向けて歩いていました。
その睨みつけた目をそのまま父ちゃんに向けると、
「残ってるにぎりを全部食べしまい」と笑って箸を置きました。
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父ちゃんは先週末さらに具合が悪くなり、
脳梗塞を再発してから2度目の個室に移りました。
意識はなく苦しげに呼吸しながらも、なお力強く鼓動を打つ父ちゃん。
そんな姿を見てもう、頑張って・・・と声をかけることはできない。
父ちゃんの傍らで幼い頃のことを思い出したこと・・・、
その時が間近に来てるのかもしれないと感じるのです。
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- 2008/02/06(水) 11:11:30|
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